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女子選手を苦しめた「超硬」のコース
野上大介氏が平昌ハーフパイプを解説

構成:スポーツナビ
スノーボード女子ハーフパイプ決勝で6位入賞の松本遥奈(左)と8位入賞の冨田せな
スノーボード女子ハーフパイプ決勝で6位入賞の松本遥奈(左)と8位入賞の冨田せな【写真は共同】

 フェニックスパークで行われている平昌五輪のスノーボード・ハーフパイプ種目。13日は女子決勝が行われ、松本遥奈(クルーズ)が6位、冨田せな(開志国際高)が8位と健闘したがメダルには手が届かなかった。14日は男子の決勝に平野歩夢(木下グループ)、片山來夢(バートン)、戸塚優斗(チームヨネックス)が出場する。


 コースとの相性も問われるハーフパイプ種目。女子の滑りを見て、平昌五輪はどのようなコースなのか、男子はどのように挑むべきなのか。スノーボードジャーナリストで、スノーボード専門誌『BACKSIDE』編集長の野上大介氏に聞いた。

W杯の反省を生かし史上最長のコースに

寒さも選手にとっては敵。マイナス10度だとコースの雪が溶けず、板が滑りづらくなる
寒さも選手にとっては敵。マイナス10度だとコースの雪が溶けず、板が滑りづらくなる【写真は共同】

 平昌五輪のコースはハーフパイプ史上最長の全長だと言われています。昨年同地でプレ五輪としてワールドカップ(W杯)が開かれた時は、男子で優勝したスコッティ・ジェームス(オーストラリア)はわずか4ヒットしか技をできない短さでした。2位だったショーン・ホワイト(米国)が「形は良かったからもうちょっと長くしてほしい」とフィードバックしたところ、逆に長くなってしまったようです。


 今日(13日、大会5日目)は、各選手は6回、7回と飛んでいました。選手たちは通常5回のベストルーティーンでランを完成させるべく何年も練習を重ねてきているので、困ったと思います。技を最後に付け足すのか、そもそも構成から入れ替えるのか。つまり技の引き出しを持っている、対応力の高い選手が有利です。


(平昌の寒さに対する懸念は)11日の練習では平野歩夢選手が「寒くて無理っす」と言って、高難度の技を回避していました。1月末に米国で開催されるXゲームズもナイター開催なのでマイナス10度くらいいくのですが、平昌は日中でもそれくらいの日があります。


 ここは人工雪でもともと硬い雪質ですが、寒いとさらに硬くなります。スキーやスノーボードは板の小さな溝に溶けた雪(水)が入ることで滑るのですが、寒すぎるとこれが溶けずに板が滑らなくなるんです。選手たちのテンションを考えても、暖かい方がいいのではないでしょうか。

冨田せなの転倒は平昌ならでは

冨田せな(写真)の転倒は、平昌のコースならではの罠にはまった
冨田せな(写真)の転倒は、平昌のコースならではの罠にはまった【写真は共同】

(女子決勝に出場した)冨田せな選手はすごく安定感があり、奇想天外なルーティーンは持っていないのですが、2回転半や2回転、もちろん1回転半も含めて、両サイドの壁でバランス良く安定した滑りが特徴で、高さも出せる選手です。


 ただ冨田選手に限らず多くの女子選手はどうしても脚力があまりありません。そのため雪面が硬いコースでは壁を上って最後に飛ぶとき、ソール面だけを使う理想型ではなく、エッジを使って飛ぶことが多くなります。そうしないと谷側にずるずる滑り落ちてしまい、上に力がいかなくなるんです。


 エッジを効かせるとどうしても減速するので、早く踏み切らざるを得ず、高さも出ません。高さがなければ回転力も足りなくなり、本来はフラットな板の状態で着地したいところを、エッジで耐えながら何とか着地することになります。ただ高さがないのでボトム付近に落ちるしかなく、さらに減速する悪循環に陥ります。


 冨田選手が2本目のキャブ720で転倒したのは、着地でエッジに耐えられず弾かれたからです。うまい滑走技術を持っている選手ですし、平昌のコースでなければもしかしたら転んでいなかったかもしれません。


 そういう意味では、ここはごまかしが効かないパイプだと言えます。本当にシビアなので、本当にうまい選手でなければうまく滑れないでしょう。まあ硬すぎですね。滑っただけですごいと思いますよ。

松本遥奈、メダルへ入れた1080は未完成

松本遥奈(写真)はフロントサイド1080を入れメダル圏内を狙ったが、成功させても難しかったかもしれない
松本遥奈(写真)はフロントサイド1080を入れメダル圏内を狙ったが、成功させても難しかったかもしれない【写真は共同】

 松本遥奈選手については1本目で70.00点を出した後、2、3回目はフロントサイド1080を入れてきました、でもフロントサイド900が一番高難易度だった1本目でも、もうひと段階ブラッシュアップはできたと思います。細かい部分を修正し、完璧に滑りきって75〜80点近くを狙う作戦もあったと思うのですが、彼女はもっと上を目指したのでしょう。


 メダルを狙うつもりで入れた1080ですが、僕が1月上旬くらいに聞いた段階で「まだ完成していない」と言っていて、本番で転倒せず成功したのを今日初めて見ました。平昌に向けて相当練習してきたんだろうなと思います。


 ただ、まだ完成度はあまり高くなかったのだと思います。2回とも着地こそしましたが、フラットではなくかかと側で立って耐えるので精一杯ですぐに減速してしまい、その後のフロントサイド720での転倒につながりました。フロントサイド720を回避するという選択もあったと思いますが、どちらにせよスコア的には難しい判断ですね。


 たとえ高難易度のルーティーンがきれいに決まっていても、メダルは難しかったでしょう。グラブを入れる余裕などを感じなかったからです。グラブにはスタイルを出す意味もありますが、回転軸を安定させ空中姿勢をキープするという意味もあります。手を離しての回転はバランスが難しくなります。

絶対女王クロエ・キムは98.25点で金メダル

金メダルを奪ったクロエ・キム(写真)は100点を取れてもおかしくない実力を持っていた
金メダルを奪ったクロエ・キム(写真)は100点を取れてもおかしくない実力を持っていた【写真は共同】

 金メダルを奪ったクロエ・キム選手(米国)はプロツアーで100点も出したことがある選手です。今日はキャブ1080の着地がちょっとズレたのですが、それがなければ100点が出たと思います。


 3本目は金メダルが決まった状態でしたので、回さず高いエアを見せるだけのかっこいい滑りをするという選択肢もありました。でも攻めて、連続1080という彼女の絶対的な代名詞を披露しました。金メダルを取るために習得してきた技を、まあなくても結局金メダルを取ったわけですが(笑)、世界中にただ見せつけるためだけにトライして成功したわけですから、かっこいいですよね。

男子決勝のかぎは気温と風

平野(写真)ら日本勢がメダルに絡むには、風や気温の影響も大きく出るかもしれない
平野(写真)ら日本勢がメダルに絡むには、風や気温の影響も大きく出るかもしれない【写真は共同】

(男子のソチ五輪銅メダリスト・平岡卓の予選落ちについては)平岡選手は2015年のUSオープンで優勝して、自分のなかでこれ以上何を目指していいのか分からない、といった状態になってしまいました。スノーボードはコンテスト主義ではない部分があります。彼は滑りを映像や写真で残すプロ活動を、競技もやりながら二刀流でやろうとしたんですけど、その間に競技者としては持ち技的に置いていかれてしまったんですよね。


(日本人3選手が出場する決勝は)風がなければ強いと思います。ハーフパイプは「いかに減速させないか」というスポーツです。そんななか日本人選手は滑走技術が高くて、エッジをしっかり使いつつなるべくスピードを維持しながらボードの抵抗をなくしてきれいに抜けていく、ハーフパイプの基本となる動きがうまいんです。


 繰り返しになりますが、風がなければいいですね。男子の方が女子より高く飛ぶので影響を受けやすいですし、日本人の方が外国勢よりも体重が軽く影響を受けやすいです。あとは寒くなければいいのですが、明日は暖かいみたいですね。どうやら選手たちは寒いとテンションが上がらないらしいので(笑)。


 ボトムが荒れやすいという話もありますが、彼らの技術を持ってすれば苦ではないと思います。前回ソチ五輪やその前のバンクーバー五輪では、雪不足などでパイプの形があまり良くありませんでした。もし風がなく、気温も暖かければ、今回が本当の頂上決戦になるのではないでしょうか。


(取材・文:藤田大豪/スポーツナビ)

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構成:スポーツナビ

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